須之内 哲也 sunouchi
tetsuya |
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6月13日、初美が自分で、私の実家に、「皆に、話があるから」と電話してあったので、お昼頃に皆で来てくれた。 初美は「自分がガンで、病院から電話がありしだい、入院して手術することになるだろう」そして「自分が死んだら、子供達は大きいからいいけど、哲ちゃんが一人になって、心配で仕方ないから、皆で哲ちゃんの事を頼む」と涙をがまんして、私の事を頼んでくれた。 私の母親も涙を流しながら「初美さんは心配しなくていいよ、自分の病気を、治す事だけ考えればいいのだから」と言った。 私の兄姉も、初美を励ましてくれていた。私も初美の背中をさすりながら「大丈夫だよガンだって、治るのがあるのだから」と言ったけど、私も絶えられなく涙がでてしまった。 初美は、入院する前にすべてを覚悟して、私を親兄姉に頼んでから、自分が死んだあとの事を考えていて、私の母親に「私が死んだら、お父さんのいるお墓に入れてね」と頼んでいた。初美の気持ちを思っただけで、涙しか出なかった。 でも、皆で帰るまでには、遅いご飯を食べて、初美を励ましてくれ、心配はしていたけれどできるだけ明るく話してくれて帰っていった。 6月14日、明日の大腸検査の為に、朝から下剤を飲んでいたが、会社に迷惑がかかるからとお昼休みの時間に、退職願を出しに行って、会社の人達に挨拶して辞めてきた。 会社の人達も「辞めなくても」とか「送別会もして」とか言ってくれたらしいけれど、初美は「入院したらどうなるかわからないので」と断ってきたと話してくれた。会社を辞めるのが、すごく淋しいらしく「仕事も楽しかったよ。皆な良い人ばっかりでよかったのだけれど、会社にこのままだと迷惑かけるものね」とか「元気だったら、まだまだ働けるのにね」とあんなに淋しそうな初美の顔を見たことがなかった。私も初美に「会社に迷惑かけるもんな」と話して納得させたが、仕事も会社の人達との別れが、淋しかったのだろうとわかっていた。 病院の検査で、初美が「大腸の検査はいやだな」と言っていたので、私は先生に電話して「胃ガンの末期だとわかっていても、まだ検査するのですか、もう初美を痛いことで、苦しめないでほしい」と言い「出来れば、もう何もしないでほしい」と言ってしまい、先生は「検査は全部やらしてほしい、まだ他にもあるかもしれないので」と言われた。 検査は、あたり前の事だとも思うけれど、初美が胃癌の末期だと聞かされただけで、私はもうそれ以上探さなくてもいいと思った。今は元気なのだから、このままでいてほしい、と冷静に考える事が出来なくなっていた。 ●vol1. 初美の病気 ●vol2. 動揺 ●vol3. 手術、「哲ちゃんをおいては死ねない」 ●vol4. 告知 「哲ちゃんは生きていなければダメだよ」 ●vol5. 告知 病気でなかったらいいのにね ●vol6. 哲ちゃんありがとう コラム(須之内 哲也)へ戻る
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