〜第4回 公開ワークショップ 報告〜
 
  「看護の技と心〜コミュニケーションについて考える〜」

   報告者:澤田・永野
   アドバイザー:村松静子
<ねらい>

@ コミュニケーション技法・理論ということのみにとらわれず、相手を通してコミュニケーションを実際に体
  験し、自分に気づくことが出来る。

A 自分の構えをはずしながら、感情交流を体験することが出来る。

<プログラム>

     AM ・挨拶   (司会)             PM ・エクササイズA
         ・ラーニングスタッフ制について         ・ ケースを通して
         ・エクササイズ@

 *ラーニングスタッフがこのテーマを取り上げた理由

コミュニケーションは日常的なものであり人間関係を築く上で避けられないことである。しかし、特にナースは、情報がない・話が出来ない  患者・とっつきにくい人等と向かい合うことになった時、「コミュニケーションがはかりにくい」と言いがちである。
真意が見えない・わからないと「構え」が出来て人間関係に壁が出来るのではないか。そこで、今回は、自分の構えは何なのか、そしてコミ ュニケーションを阻害しているものは何なのか。体験を通しながら考え、一人一人が自分と、相手と構えをはずして向き合うことを学ぶ機会 にしたいと考えた。


AMは

司会者より今回のテーマ、目的、いつもの3つの約束(注:第1回ワークショップ報告参照)]等、話された後、ラーニングスタッフ制についてアドバイザーより解説、その後エクササイズ@にはいる。

自己紹介を兼ねたエクササイズ@ではコミュニケーションの入り口である「第一印象」について、

1. 第一印象はどのように作られるか
2. 第一印象と実際がどれくらい違うか
3. 自分がどのように相手に印象を与えているか

を体験を通して感じたうえで、「知って欲しい自分」をアピールした。

⇒いつもと異なる自己紹介に最初は、みんな緊張していてどのようなことを尋ねたり、話したら良いのかと
  いう構えのようなものを感じたが、徐々に場が和み雰囲気に変化が見られたと思う。その中で自己
  アピールの仕方も様々であると感じた。
 見た目、先入観、表情、雰囲気、集団の中の個など第一印象に与える因子をたのしみながら考える
  きっかけ、また自分の相手へ与える印象、自分の枠組み、色眼鏡の傾向など気づく入り口になった。
  しかし深く第一印象や思い込みの形成について捉えるまでには至っておらず、エクササイズの難しさを
  感じた。


PMは

*エクササイズA「聴く(たずねる)・話す(こたえる)・観る」
 「私の学生時代」というテーマで、聴き手・答え手・観察者をそれぞれ体験し、自分の聞き方、話し方、観
  方を、第三者を通して気づく機会にする。

 途中、アドバイザーより、「聴く側、話す側が目標もなく話していてはただのお話し合いになってしまう。
  各グループで焦点を絞った上で評価できるように目標を決めて進めるよう」助言があり、即行動する。

 *参加者の感想

・最初はお互いに距離を感じており、3回目になり導入がよく距離感が縮まった
   (距離感は、お互いの言葉の間、表情、視線などから感じた)

・自分では出来ないとの思い込みが、相手を通して、どうすればよかったか、が理解でき、自分の思い込
 みをはずし行動化が出来そう。

・最初の出だしが難しかったが、15分の中で徐々に距離が縮まっていくのを感じた。

⇒最初は、なかなかお互いに距離感を感じさせる場面がグル−プごとに見られた。私達自信の目標の到
  達点や話題の焦点をもう少し絞ることで、限られた時間の中でのコミュニケーションについて実感を持っ
  て体験できたのではないかと思う。

 

 *ケースを通して
参加者からの実際の壁や課題を出してもらい、コミュニケーションという視点で分析。

ケース@

癌のターミナル状態で外泊。外泊期間中24時間付添看護を希望。ナースが24時間付くことで安心を得られ、そのまま退院し在宅療養へ移行した。24時間付き添いたいナースと体制として24時間付添形態を継続していくことが難しい会社の状況。これまでの経過、今後起こりうる容態変化に対し、今この時期に、自分自身が考える精一杯の方法と、会社としての対応がベストかという疑問を持っている。家族と今後の体制についての調整の話し合いに入るが、家族へどのように接したらよいか。

★アドバイザーより
⇒24時間付き添いの希望を聞いたとき、どのように答えたか、がポイント。このときの
              対応は「そうですよね。今こそ必要なことですよね。」と伝えることにより、構えが取れ
              感情が交流する。「あなたはそう考えるのね。私もそう思うのよ。」とだんだん近づい
              ていく。
              これだけ家族に囲まれ、ヘルパーさんが必死に取り組んでいる。最高の環境の中
              でも不安が残りますね。私たちには(不安に対して)この部分はプラスできますよ。」
              構えや限界で迫るのではなく、自分を感情に流されないように、客観的な場におき、
              "3つの約束"を守り実行する。
              可能性の中の限界を伝え、限界の中での可能性を伝え合うことで感情交流をして
              いく。まずは疑いを持たないこと。
             家族にはそれぞれの役割があり思いの違いがある。家族みんなで確認してもらう必
              要がある場合、この人に伝えれば確認できるという人に伝えることにより全体に伝わ
              る。

ケースA

第3回ワークショップで出されたケースのその後の報告(第3回報告参照)
「30代後半の女性、エンドステージ。独居。退院して「帰るところがない」と言われる。今後どう支援するかについて前回話し合う。その後の経過が報告された。

退院前の面接終了の場で前回のアドバイスを生かし、対決技法を試みる機会を持った。結果は「自分で選んで実家に退院する」ことになった。彼女から「あなたは私ときちんと向き合ってくれたわ。ありがとう」の言葉あり。
その後の生活状況や受診の際の送迎手段をどうするのか?彼女の最期をどうするか?ということが今気がかりでいる。

★アドバイザーより
⇒退院するまでが一番の役割。今後は何か相談があったとき改めて向き合えば良
               い。
              彼女の言葉から今回充分向き合えたことがわかる。


⇒⇒2ケースについて、それぞれ参加者がそれぞれ自分の立場に置き換え、ケースを共有する機会にな
    ったと思う。ケース分析において、そのケースのことのみならず、類似した状況での自分の行動のあ
    り方や状況判断を改めて学ぶことが出来ると感じた。
 *最後に

アドバイザーからエクササイズAについて、「タイトルを与えられることにより、構えが生じる。聴く人、話す人の間でも、また聴き手、話し手という言葉の上でもギャップがある。
聴き手=尋ね手、目標が定かでなくぼやけ、尋ねなければということに縛られ構えが出来、3つの約束から反れてしまう。感情交流という事を考えると、お互いに努力しあいそこから構えが外れてくるだろう」との言葉があった。
エクササイズAを通して感じたこと、普段感じている、考えていることを振り返り、意見を出しあえる場がなかったこと、辛かったことなどネガティブな内容があまり出なかったこと、から全体として構えをはずした感情交流まではいかなかったように思われる。

ケースについては、同じような体験をもつ参加者に、「構え」と3つの約束の意味が広がり改めて認識できたと思う。

全体を通して、今回はとても難しいテーマをとりあげたのだと、ワークショップをやってみて改めて感じている。コミュニケーションは、看護に不可欠な技術である。しかし、技術や技法ということにだけとらわれるではなく、看護をする上で必要な状況があり、より近づいたり、またときには離れたりするには、その人に向き合う為に状況判断をして、見極め行動することが基盤にあることだと感じる。ワークショップは気づきの機会であるが、今回の学びを今後のいろいろな場面に生かしていきたい。

今回ワークショップの構成の難しさも痛感した。自分達がやってみたいテーマであり、エクササイズであったが、感情交流をしていくこと・この場を最大限に活かしながら、限界の中ですすめていくことの大切さを痛感した。構成をしっかり練っていくこと、しっかり意図を伝えながら進めていくことと言う点で反省も多かったため、今後に生かしていきたい。

感情交流をしっかりしながら、最高の学びの場にしていくために、自分達はどうして行ったらよいのか今後しっかり考えながらすすめていきたいと思った。

 *アンケートの一部抜粋

@全体の感想(良かった点・どちらともいえない点)

 ・学び・気づきという点では、多くあった。面接技法・単なるコミュニケーション以上のものがあった。 
 ・このワークショップを今後に役立てていきたいと思う。構えは誰にでもあることがわかった。職場にもこう
  いう機会を設けて自己を見なおすことができればいいと思った。自分をさらけ出す(表現)することっ
  て大切でも、大変難しいと思っている。大変頭の体操になった。
 ・自分のコミュニケ―ションの見なおしができた。普段考えていない内容を聞かれても、質問のしかた
  で柔軟に対応できる事を知った。
 ・短い時間の中ではあそこまでが限界であったようにも思うが、もう少し分析する時間があるといいと
  思う。
 ・コミュニケーションは難しいことの意味が良く理解できた。3つの約束(心得を努力してみることが)を
  試みる場所として他人の胸を借りて実体験できた。もう少し時間がほしかった。
 ・午前中の自己紹介はリラックスした中で進められてよかったが、第一印象というテーマをしっかり捉え
  ることにはならなかった。

A今後のワークショップで取り上げてほしいこと・興味があることなど

 ・訪問看護24時間体制の長所・たいへんな面とどのように解決していったか、事例の中で学びたい。
  失敗談でも!
 ・忙しい中での(患者や家族への対応)コミュニケーション方法。
  (例:「ちょっと待ってください」ばかりいっていことから卒業したい)
 ・看護の可能性
 ・患者(世間の人達)が感じる、ホスピスの移行をどのようにすればよいか、とても困難を感じている。
  末期の療養の場をどこにするか、患者が決定する時、また末期である事を患者にどのように受けと
  めてもらえるか。
 ・場面ロールプレイを取り入れて欲しい

 


以上、第4回公開ワークショップの一部を紹介させていただきました。

皆さんからのご意見を取り入れ、自分達の反省点をふまえ、今後のワークショップに生かしてゆきたいと
思います。


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