起業家ナースのつぶやき    村松 静子 Muramatsu Seiko


 
vol. 12
  開業ナースがゆく その2
2002-4-07
 
 

3月31日の夜、銀座のとある中華料理屋の一室には笑いと熱気が漂っていた。12年前、在宅看護研究センターが開講した『開業ナース育成研修』の修了生たちと在宅看護研究センターの構成メンバー、総勢21名が集合し、個々人の現状やこれからの活動を語り合っていたのだ。

われもわれもと語るものだから、ちょっとやそっとの声では聞こえない。大声を張り上げ「私の話を聞いてよ!」と主張する者、「ちょっと待って!私は絶対やる。そうよ、負けてなんかいないわよ」と立ち上がる者、「え〜、私は何期生だか忘れましたが、ここで研修を受けたのは確かです」と、その存在をアピールする者、「まだ甘い、甘すぎる」と厳しく訴える者、それはそれは個性溢れる人たちばかりだ。そこには経営で苦しむ悲壮感などはまったく感じられない。勇ましさと頼もしさとあたたかな心が飛び交っていた。

全国に散らばって、さまざまな形で‘真の看護’を求め続ける開業ナースたちに与えられている第一の課題はネットワークづくり

『開業ナース』という名称にこだわればこだわるほど「GIVE & TAKE」をしっかり意識した多くの人たちと手をつなぎ、看護の価値を伝えていく。ナースの個人開業の道はもはや時間の問題といえる。その道は必ず拓かれると、皆確信している。

しかし、道が拓かれるだけでは意味がない。
同僚、そして関係職種や関係機関はもちろん、看護を受けてくださる本人・家族の皆さんが、その必要性を感じ、認めてくださって初めて価値があるといえるのだ。
本人・家族の皆さんが、その必要性を感じ、認めてくださって初めて価値があるといえるのだ。

 
 
vol. 11
  開業ナースがゆく その1
2002-2-04
 
 

看護の実践と理論の融合を図ることを目的に設立された「在宅看護研究センター」は、16年経った今、また新たな挑戦を始めようとしている。7ヶ月間休眠させていた収益事業部門のナース集団「日本在宅看護システム」の商号をよみがえらせ、今の日本社会の動きに真摯に向き合うナースの存在をアピールしようというのだ。

‘必要なとき、必要な看護を、必要なだけ提供したい’
‘年齢問わず、どんなに重症でも、その人が在宅での療養を望むのであれば’
‘いつでも、どこでも、誰もが受けられる看護システムづくりをめざして’


心に秘められたそれらの思い、自立しようというナースたちの『可能性へのさらなる挑戦』であり、実に夢のあるこの時代ならではの愉快な発想でもある。
これまでの苦悩を苦悩とせず、すべてを【教え】と受け止め、ネットを編みながら前へ進む。さて、その方法とは?
「日本在宅看護システム」は「自律」した若いナースたちのエネルギーの塊となる。その中では各自が求めるものを求め、自らの役割は責任をもって推し進めていく。
そしてその一方に、「屋号」を掲げたナースたちがいる。
「私たちナースにも個人開業の道を拓いてください。
 私はその道が拓かれることを待っているのです」

「私の看護の業を買ってください。
 私には私流の業があります。あなたはそんな私の業を買ってくださいますか」

彼女たちの心の底に潜む願い、「屋号」を掲げる意味はそこにある。まずは「日本在宅看護システム」と契約関係を結ぶ形で、「日本在宅看護システム」から己の業を買ってもらう。
「あなたの業はいらないわ」
まずいものなら、当然買ってはもらえない。彼女たちの厳しい修行が今始まったのだ。

同じ組織の中でありながら、厳しく向き合い、評価し合う。この新たな取り組みは、各々開業ナースとしての意識と責任・自覚を高める。そして、確実に「看護の質」の向上につながるはずなのである。

 

 
vol. 10
  看護の自立をはばむもの・その4−@ 
2002-2-04
 
 

看護 経営者に欠くことのできないのが経営感覚と経営能力、それらは、ナースの私にとって皆無に等しかった。会社を継続していく上で最大の難関となったのがこの第三の壁である。

 ‘医療と福祉の狭間で苦しむ人たちに看護の手を差し伸べたい’
 ‘看護の原点を模索したい’‘買っていただける看護に挑戦したい’

しかし、理想はあくまで理想であり、資金が無ければ継続できない。
開業して半年後、200万円の資本金が40万円しか残っていないことに気づいた私はあせった。
部屋代が払えなくなったらどうしよう、
電話代が払えなくなったらどうしよう、
スタッフの給料が払えなくなったら・・・頭を過ぎる不安の数々、
「このままでは続けられない」それが現実の姿であった。
事務所を借りるのに必要な諸経費の他、印鑑や白板等の事務用品、最小限のテーブルや椅子、24時間つなぐための電話やポケットベル、コピー機やワープロ機、医師への伝達にも役立つ医療用のカメラなど、必要なものをそろえるためには費用がかかる。
1つ1つをそろえる喜びとは裏腹に、運営資金は確実に減っていく。
そこで始めて味わう経営者としての責任の重さと決断の必要性、十分な資金があっての出発ではないだけに「私は経営者なのだ」と、突きつけられた現実を改めて認識した。
「もう進むしかない。私たちの看護を待っていてくださる方たちがいる。
 たとえ一人になっても10年は続けなければ」その思いは日に日に高まっていく。そして、
「私に売れるものはないのか、いや、必ずあるはずだ。看護のほかに何が出来る?」
フッと気づくとそう自問している。

その頃、奇しくも模索され始めていたのがシルバー産業だった。
私たちの活動のことが新聞紙上に掲載されると、次々に模索中の大企業の新規事業開発担当者がやってきた。記事の大きさに比較するとあまりに小さすぎる事務所に、「どうやったら儲かるんだね」とふんぞり返って言う人もいた。「私は儲けようと思って始めたのではありませんので、それが目的なら、どうぞお引取り下さい」私も負けてはいなかった。案の定、広い事務所に大勢のナースやヘルパーを抱えて大風呂敷を広げた会社は半年と続かなかった。

そんな中で、私にできることが見つかった。
どこにも負けないヘルパー教育を行うことである。
「在宅看護ヘルパー育成プログラム」はこうして誕生したのだった。

 

vol. 1〜3  「心」を思う その1・その2・その3

vol. 4〜6   看護の自立をはばむもの その1・その2・その3

vol. 7〜9   この時期になると浮かんでくるあの光景 その1・その2 私は言いたい、今だから言える

vol. 13〜15  開業ナースがゆくその3 
看護の自立をはばむものその4-2 本当にほしいサービスができないわけ

vol.16〜18 点滴生活雑感 ともに創る幸せ 看護の自立をはばむものその5


vol.19〜21 ともに創る幸せ2 ともに創る幸せ3 ともに創る幸せ4

vol.22〜24 ラーニングナースを位置づける その1なぜ必要か その2応援団はいる
 ナースの私が抱く疑問〜1.痰の吸引

vol.25〜27   ナースの私が抱く疑問〜2 静脈注射 素敵なエッセイの贈り物 疑問は疑問、「今の時代って?」

vol.28〜30  看護師の資格の意味を問う  感受性を揺さぶる学習環境が必要なのでは?  ラーニングナース制

●vol.31〜33 40年の歴史をもつ企業内大学老舗『ハンバーガー大学』 
介護保険が抱える問題〜看護にこだわる開業ナースの視点から  恩師、國分アイ先生


●vol.34〜36 國分アイ先生の遺志を継ぐ 安比高原の女(ひと) 介護保険制度の次の手は介護予防?〜今、私が思うこと


●vol.37再び「心」を思う その1vol.38 在宅看護研究センター20回設立記念日を迎えてvol.39「医療行為」、そこに潜む「矛盾点」


●vol.40  スタッフと共に追求する看護の価値:その1 vol.41スタッフと共に追求する看護の価値:その2 
vol42.「在宅医療支援展示室」の誕生、その裏に潜む願い

 

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